長期修繕計画は定期的な見直しが必要
長期修繕計画とは、約25~30年かけて行う分譲マンションの維持管理を、円滑に進めるためのものです。
長期修繕計画の中には、修繕を行う箇所とその工事費用だけでなく、修繕積立金の予想積立て額や、工事にかかる費用をまとめた収支計画なども盛り込まれています。
これらのデータを事前に用意しておくことで、高額な費用を伴う大規模修繕工事を、必要な時期に適切な費用で進めることができるようになります。
この長期修繕計画の作成と見直しも、分譲マンションの管理組合の重要な業務のひとつです。
長期修繕計画の工事項目
長期修繕計画では、各工事項目ごとの工事単価と修繕周期を予測します。
工事単価とは、平方メートル、または一箇所ごとの施工費用のことで、マンションごとの施工面積を乗じることで、大規模修繕費用を予測することができます。
また、修繕周期は各工事項目ごとにばらつきがありますが、修繕時期が近いものをできるだけ一度の大規模修繕工事でまとめて行うほど、修繕積立金や工事期間の無駄をなくすことが可能です。
工事項目ごとの修繕内容詳細
以下は、長期修繕計画の中で策定すべき、主な工事項目と内容です。
なお、以下の工事項目にはより詳細な補修内容や方法が存在しますが、マンションの主な修繕箇所の例としてお考えください。
外壁の耐久性
- 工事単価:約~6千円/平方メートルあたり
- 工事期間:約2~3カ月
- 修繕周期:約10~15年
屋上の防水性
- 工事単価:約8千~2万円/平方メートルあたり
- 工事期間:約1~2カ月
- 修繕周期:約10~15年
鉄部の塗装
- 工事単価:約2~5千円/平方メートルあたり
- 工事期間:約1カ月
- 修繕周期:約5年
設備の耐久性
- 工事単価:約80~200万円/一箇所あたり
- 工事期間:約1カ月
- 修繕周期:約15~30年
共用部のリフォーム
- 工事単価:約4千~1万円/一箇所あたり
- 工事期間:約1~2カ月
- 修繕周期:約20~30年
長期修繕計画を見直すべき理由
長期修繕計画は、あくまでも将来的な修繕計画を予測するためのツールです。
修繕積立金や修繕費用なども、計画作成時点の予測に過ぎないため、定期的に内容の見直しを行わなければ、大規模改修工事が必要な時に、修繕積立金が不足したり、工事範囲が大規模になったりしてしまいます。
長期修繕計画の見直し周期
長期修繕計画は、約25~30年スパンで計画し、約5年ごとに見直しを行うように、国土交通省の「マンション標準管理規約」で推奨されています。
また、鉄部の塗装など、工事項目によっては約5年周期の修繕が必要な箇所もあるため、これらの箇所を修繕するたびに、実際の工事費用を長期修繕計画に反映させておくことも大切です。
長期修繕計画を見直すためには
長期修繕計画の作成や見直しは、総会決議が必要です。
総会決議で見直しの承認を得るためには、出席者の過半数の議決権で決定する「普通決議」となります。
また、修繕積立金を大規模修繕工事の実施やコンサルタントへの報酬支払に使用する場合も、総会決議のうち、普通決議で求めなくてはなりません。
なお、大規模修繕工事の実施については、共用部に大きく手を加える場合は4分の3以上の賛成を求める「特別多数決議」が必要です。
長期修繕計画の見直し費用
長期修繕計画の見直しは、分譲マンションの管理会社に任せることもできますが、住民の生活に即した修繕を行うためには、管理組合主導で進めるほうが望ましいでしょう。
しかし、管理組合だけでは大規模修繕工事に関する知識が不足するため、マンション管理士や設計事務所などのコンサルタントに、長期修繕計画の見直しを委託することをおすすめします。
管理会社に委託した場合の費用
管理会社への長期修繕計画の見直しは、無料と有料いずれかで行われます。
有料の場合は、約10~20万円、または約35~50万円での作成が相場となっています。
しかし、管理会社目線で作られる修繕計画は、住民の生活やマンションの実態に即していないことも多く、大規模修繕工事の知識に乏しい管理会社では、不要な工事が盛り込まれたり、修繕箇所が抜けたりする可能性もあります。
そのため、有料で長期修繕計画の見直しを依頼しても、信頼性に欠ける内容になってしまうため、見直し費用の見積もりを管理会社から提示されても、即答するのは危険です。
コンサルタントに依頼した場合の費用
マンション管理士などのコンサルタントに長期修繕計画の見直しを依頼すると、約10万円の基本料金が発生しますが、より精密な建物診断も実施する場合は、約60~100万円の費用必要になります。
大規模修繕工事のコンサルタント費用は、修繕積立金から捻出しなければならないため、コンサルタントから見積もりを渡された時は、費用の妥当性をよく確かめなくてはなりません。
コンサルタントと顧問契約を結んだ場合
マンション管理の指標として、国土交通省が作成した「マンション標準管理規約」では、平成28年の改定により、コンサルタントの活用を推奨する文面が追加されました。
国土交通省が行った改定では、居住者ではない、マンション管理士などの外部専門家が管理組合の役員になることもできるようになったため、改定とコンサルタントの活用により、より管理組合の負担軽減が期待できます。
コンサルタントに顧問契約を委託した場合は、月額料金の中に長期修繕計画の見直し費用が含まれますので、管理組合業務全体のサポートが希望であれば、こちらの形式を検討することもおすすめします。
なお、コンサルタント費用は月額で約3~5万円が相場ですが、戸数が多いマンションほど月額料金は高くなる傾向にありますので、見積もり金額から戸あたりの料金を割り出して、修繕積立金と比較すると良いでしょう。