マンションの修繕積立金を値上げする際の進め方は?

マンション大規模修繕工事を行うための修繕積立金

マンションで大規模修繕工事を行うための費用は、居住者から徴収した、修繕積立金から支払うことになります。

しかし、大規模修繕工事の費用は必ずしも予想通りの金額で収まるとは限らず、建物の劣化状況が深刻だったときは、高額な修繕費用が必要です。

マンションの共有部分の設備で劣化するものは?

そのため、マンションの大規模修繕を行おうとしても、修繕積立金が足りないことが分かり、慌ててしまう管理組合も少なくはありません。

マンションの修繕積立金の値上げは適切?

修繕積立金を徴収する方法は3通り

修繕積立金の不足分を補う方法は、住民から徴収したり、金融機関などで資金を募ったりするなど、主に3通りの選択肢から選ぶことになります。

住民の修繕積立金を値上げする方法

住民から毎月徴収する修繕積立金の額を値上げして、大規模修繕工事までに、工事費用を集める方法です。

大規模修繕工事の費用がある程度予測できており、かつ、工事実施のタイミングまで猶予がなければ、この方法では不足分を回収できない恐れがあります。

住民から一時金を徴収する方法

大規模修繕工事費用の不足分を、住民から一時金としてまとめて徴収する方法です。

大規模修繕工事の実施タイミングが迫っており、月々の修繕積立金を値上げするだけでは間に合わないときには、この方法を選択しなくてはなりません。

ローンを借りる方法

管理組合名義で、大規模修繕工事のためのローンを組む方法です。

住宅金融公庫の「マンション共用部分リフォーム融資」をはじめとして、様々な建材メーカーや建築会社が、大規模修繕工事向けのローン商品を用意しています。

ローンは、一時金の徴収や、修繕積立金の値上げと並行して利用することも可能です。

ただし、適切な長期修繕計画が組まれていなかったり、返済額が修繕積立金の8割以上になったりする状態では、融資を受けることができません。

正しい修繕積立金の値上げ

現在の修繕積立額では大規模修繕工事の費用が支払えず、かつ、次の大規模修繕工事まで時間に余裕があれば、修繕積立金のを値上げを検討する必要があります。

修繕積立金の値上げは、決して珍しいことではありません。しかし、住民にとって値上げは無いに越したことはないため、なぜ値上げが必要なのか、根拠を明らかにし、時間をかけて説明する姿勢が大切です。

値上げに対する住民との合意の取り方

大規模修繕工事は、長期修繕計画に基づいて実施されます。

長期修繕計画では、マンションで補修が発生する箇所と、それぞれの補修費用や、修繕積立金の積立額を予想したものなどがまとめられています。

この長期修繕計画をしっかり管理し、定期的に内容の見直しを行って、住民が納得するデータを示すことが、合意形成のための重要なステップとなるでしょう。

長期修繕計画の見直し費用は?5年周期で見直す必要がある?

そのほか、管理費の無駄の削減や、共用部の使い方の見直しなど、修繕積立金の無駄遣いを改善しておくことも、住民に値上げの必要性を訴えかける要素となります。

値上げが決定するまでのステップ

修繕積立金を値上げするときは、総会を開くことになります。

修繕積立金については、総会の「普通決議」で決定しなければならず、議決権の2分の1以上を得ることで、可決されます。

ただし、マンションで管理費に関する規約を別途設けている場合は、区分所有法に基づき、「規約の変更」という別のステップに進むことになりますので注意しましょう。

規約の変更は、総会の「特別決議」で可決しなければなりませんので、議決権の4分の3以上を集めなければなりません。

修繕積立金の値上がり相場は?

修繕積立金自体は、マンションの面積や住居の戸数によって異なりますが、国土交通省のデータによれば、修繕積立金は、戸あたり約11,000~12,500円が修繕積立金の相場となっています。

平米あたりでは、約150~220円が相場ですが、築年数が古いマンションほど、平米あたり約100円前後と少なくなっていきます。

値上がり額の相場としては、一気に数万円上がるケースは珍しく、住民への合意を計りながら、数千円ずつ上昇する傾向にあるようです。

例えば、次の大規模修繕工事まで約5年の猶予があるケースでは、最初の3年間は、約4,000円値上げし、次の3年間でさらに3,000円増やして、当初より7,000円値上げした金額を徴収するといった流れになっています。

また、値上がり額は、スタート時点の修繕積立金が低いほど増額率も高くなり、修繕積立金が極端に少ないマンションでは、一気に8,000~12,000円の増額が必要になることもあります。

タワーマンションの修繕積立金の値上げ相場は?

値上げは管理組合で決めることが大切

管理組合が値上げの有無を決めることは、管理会社まかせの管理体制を防ぐことにも繋がります。

悪質な管理会社の中には、中間マージンで利益を得るために、大規模修繕工事の際に建設会社と癒着して、無駄な工事を盛り込んでわざと工事費用を吊り上げ、修繕積立金の値上げを管理組合に呼びかける所もあるため注意が必要です。

管理会社に大規模修繕工事を任せないためにも、管理組合が長期修繕計画を管理し、正当な事由による値上げを行って、住民にとってもマンションにとっても、価値のある修繕を行うことが大切です。