10年以上経ったら大規模修繕工事の検討を
大規模修繕工事の周期は、約12年と言われます。
しかし、新築から10年以上経ったマンションや、前回の大規模修繕工事から10年以上経った既存マンションでは、12年目を迎える前に劣化が生じていてもおかしくはありません。
また、12年という周期は、建築基準法で定められた厳密な数値ではないことにも注意が必要です。
そのため、新築、または前回のリフォームから10年経ったマンションの管理組合は、大規模修繕工事の周期と言われる12年目に備えて、2年前から大規模修繕工事の準備を進めておく必要があります。
大規模修繕工事は前準備が肝心
大規模修繕工事を実施するためには、施工業者選びだけでなく、管理組合とは別に修繕委員会を発足したり、住民の賛成を求めたり、修繕積立金を集めて費用を用意したりといった、様々な準備が発生します。
大規模修繕委員会とは?細則からメンバーの募集方法まで徹底解説!
そのため、大規模修繕工事を計画し、実施するまでには、約2年の準備期間を要します。
修繕周期と言われる12年目に準備を始めていては、建物の劣化を修繕周期以上に放置することになりますので、10年を目途に、大規模修繕工事を見据えた行動が必要と言えるでしょう。
管理組合の方必見!マンションの大規模修繕工事の進め方や流れは?
工事部位ごとに修繕周期が存在する
マンションには、部位ごとに推奨修繕周期が存在します。
国土交通省の『長期修繕計画標準様式』でも、修繕周期の例が記載されていますが、ここでは一般的なマンションの利用実態に近づけた修繕周期を記載しています。
外装の修繕周期
マンションの外装には、外壁、屋上、外構などがあり、大規模修繕工事の中でも特にメインで工事が行われる部位です。
外装の部位ごとの修繕周期
- タイル外壁:約10~12年
- 外壁の塗装:約10~15年
- 目地シーリングの打ち替え:約5~10年
- 屋上の防水工事:約15年
- ベランダの床面防水工事:約10年
- 鉄部の塗装工事:約5年
- コンクリート補修工事:約10~12年
設備の修繕周期
電気、給排水管、ガス、空調、エレベーターなどの設備が使用できなくなると、多くの住民の生活に支障が生じますので、故障して完全に動かなくなる前に、交換や補修を行わなくてはなりません。
また、防災設備が劣化していると、建築基準法の防災性能を下回ってしまう恐れがあります。
設備の修繕周期は、設備ごとの耐用年数に左右されます。
設備の部位ごとの修繕周期
- 電気配線の交換:約20年
- 配電盤の交換:約25年
- 給排水設備の交換:約12~15年
- ガス配管の交換:約20~25年
- エレベーターの交換:約25~30年
- 消防設備の交換:約20~25年
マンションの利用実態に即した修繕計画を
上記の修繕周期は、あくまでも、一般的なマンションを想定して算出された、目安の数値です。
また、建物の劣化速度は、建物の立地や面積、構造、使い方、施工時の建築基準法のルールなどによって異なります。
そのため、約12年という大規模修繕工事の周期と、部位ごとの推奨修繕周期は、必ずしもすべてのマンションに共通するわけではありません。
まずは、修繕工事が必要な部位を、お住まいのマンションから洗い出し、適切な時期と費用で部位ごとの修繕が行えるような、修繕計画作成と修繕積立金の準備が求められます。
マンションの建物診断で修繕時期を見極める
大規模修繕工事がで工事が必要な箇所や、各部位ごとの劣化具合の調査は、工事前の建物診断で調査することができます。
建物診断では、
- 外壁タイルの浮きや欠け
- 塗装の剥がれ、チョーキングなどの劣化症状
- 鉄部のサビ
- コンクリートのクラック
- 屋上、ベランダの防水性能低下
などを主にチェックし、劣化の深刻度や、補修工事の時期やグレードなどを求めていきます。
建物診断の種類
建物診断の方法は主に、調査員の目視と、専門器具を使った打診調査です。
コンクリートの中性化や塗料の強度など、目視や打診ではわからない箇所は、専用の計測器具を使って調査します。
建物診断は中立的な業者に依頼を
建物診断は、建築士や設計事務所、大規模修繕工事を実際に請け負う工事会社やマンションの管理会社などに依頼することができます。
ただし、工事会社やマンション管理会社に建物診断を依頼すると、必要のない工事や、修繕積立金の回収状況に見合わない工事費用を提案される恐れがあります。
そのため、管理組合・管理会社・工事会社のどこにも属さない、設計事務所や建築士などの中立的な業者に、調査を依頼すると良いでしょう。