防災対策は管理組合の業務
より良いマンションの住環境を作るために存在する管理組合にとって、マンションの防災対策は、最重要課題といっても過言ではありません。
また、管理会社が用意したマンションの防災対策だけでは、居住者の生活実態に即していない恐れもあるため、管理組合が居住者の代表となって、自分たちに必要な防災設備を考えていく必要があります。
管理組合・居住者・管理会社それぞれが防災情報を共有しながら、大規模修繕工事などを通じて、全員が安心して暮らせるマンションを作っていく意識が大切です。
高層マンションほど防災対策が必要
高層マンションでは、特に防災化が積極的に進められています。
高層マンションほど地震で揺れやすいため、建物内部での家具や設備の倒壊が懸念され、ライフラインが絶たれた時に多くの住民が孤立してしまう恐れがあるためです。
マンションで取り入れるべき3つの防災対策
マンションの防災対策は、主に3つの視点が含まれていることを確認して進めましょう。
建物強度の維持管理
火災や地震が起きても、簡単には被害が広がらないような強度を建物が備えているか見直し、大規模修繕工事などで改める必要があります。
建物で強度が低下しやすい箇所は、老朽化して崩れそうな階段や手すりの鉄部、今にも剥がれそうな外壁タイル、深いひび割れが集中して発生しているコンクリートなどが挙げられます。
災害発生時の蓄え
多くの住民が建物に閉じ込められた時に備えて、万が一の備えを用意しておく必要があります。
備蓄品の蓄え
水や食料、防災グッズなどを、災害時に住民全員に行き渡るよう用意しておく必要があります。
エレベーターが使えなくなった時に備えて、どの階の人でも使えるように、各階に分けて用意したり、避難所の近くに設置したりすると良いでしょう。
ライフラインの確保
水、食糧、生活用品、ラジオ、手回し発電機といった防災グッズのほか、ライフラインが絶たれた時に使える発電設備や貯水設備などを確保しておく必要があります。
避難器具の設置
各部屋のベランダに設けられた避難ハッチや、共用部に設置されている消火栓、救助が来るまで住民が生活できる避難所といった、避難器具・設備の点検や設置が必要です。
災害発生時のマニュアル作成
災害時の避難経路や設備の使い方、備蓄品の保管場所や、災害発生時のライフラインの供給方法などについて、マニュアルを作成し、住民全員に配布しておきましょう。
大規模修繕工事で災害に強いマンションを作る
マンションは、いつ発生するかわからない災害に備えて、最低限の防災設備と建物強度を確保しておかなければなりません。
約12年に一度行われる大規模修繕工事でも、防災対策を意識した工事を盛り込むことは、もはや必然と言えるでしょう。
大規模修繕工事で済ませておきたい防災対策
大規模修繕工事では、老朽化した設備の補強などは、基本的な工事項目として行われます。
しかし、不足している防災設備や、災害時に被害拡大に繋がりそうな箇所などがあれば、防災対策として積極的に工事に反映させていきましょう。
飛散しにくいガラスに交換
建物と屋外を繋ぐエントランスを、飛散しにくいドアガラスに交換することで、飛散したガラスによるケガなどの二次災害を防ぐことができます。
避難所のリフォーム
使われていない会議室などがあれば、有事の際の避難所や備蓄品の倉庫として改修するリフォームが有効です。
そのほか、既存の避難所の扉がガタついていたり、不衛生な環境になっていたりした時は、内装リフォームで安全性を向上する必要があるでしょう。
最新システムのエレベーターに変更
エレベーターのシステムが古く、災害時に事故に繋がる恐れがある時は、災害に対応した新しいシステムに変更する必要があります。
古いエレベーターに乗っているときに、災害が発生してしまうと、エレベーターが停止し、中に人が閉じ込められてしまいます。
最新システムのエレベーターであれば、地震の揺れを感知して最寄りの階に自動で移動してくれます。
自家発電装置の設置
自家発電装置を設置することで、停電時でも、エレベーターをはじめとする電源が必要な設備が一定時間使えるようになります。
発電装置の容量は、最低限、住民の避難が完了するまではエレベーターが動く程度のものか確認しておきましょう。
住民から防災についてアンケートを取る
より住民全員が安心できる大規模修繕工事にするためにも、アンケートなどを通じて、住民が抱えている防災性に関する不安を確認しておくことをおすすめします。
防災マニュアルも、管理組合や管理会社が独断で作成したものでは、すべての住人の安全性が確保されていない恐れがあります。
アンケートの結果の中から、大規模修繕工事に反映できる内容ものがあれば工事に反映させ、住民全員が必要性に納得できる防災工事を行いましょう。