管理組合の最高権限は「理事長」にある
多くの人が集まって暮らすマンションでは、住民全員が協力して、マンションの維持管理に努めていかなければなりません。
管理会社に維持管理を一任するマンションもありますが、外部の管理会社だけでは、住民の総意が反映された維持管理が行われないことは明白です。
マンション住民の意見をまとめ、維持管理に反映させるための組織が、管理組合の「理事」であり、理事のトップである理事長は、その中でも最も大きな権限を持っています。
マンション管理組合の理事とは
理事とは、管理組合の役員のことです。
主な業務は理事メンバーが遂行し、理事のはたらきをチェックする機関として、監事が置かれています。
理事長は理事の代表となり、理事会で問題について話し合い、管理規約に則りながら、監事と住民が納得できる決議を下していかなければなりません。
管理組合の理事長の主な仕事
管理組合役員の仕事は非常に多岐に渡りますが、理事長は、住民の代表としてすべての問題に向き合うことになります。
理事会と総会を開催して問題解決に取り組む
マンション運営では、収支計画や、大規模修繕工事の進捗といった通年業務に加えて、駐車場や共用部の使用ルール策定、管理費滞納者への対応など、様々な問題が都度発生します。
理事長は、これらの問題を、月に1回程度の間隔で開催する「理事会」に議題として持ち込み、解決に向けて話し合い、決議を下すのが仕事です。
また、理事会よりも重要な内容を決議する「総会」の招集権限も理事長が持っています。
大規模修繕工事の実施や管理会社の変更、管理規約の改定といった重要な議題が上がれば、理事長は2週間前を目途に招集通知を作成し、総会の中で住民全員に呼びかけなくてはなりません。
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理事長が住民の相談窓口になることもある
理事長は、理事会の議長となって、あらゆる問題の改善案を議決していきますが、住人からの直接の相談窓口となったり、外部との渉外活動を行ったりすることもあります。
ただし、議決は理事長がその場で下すことはできず、理事会、または総会の中で話し合いを経なければなりません。
マンション管理組合の理事長になったら
通常、理事長は理事会の中で選出され、総会で決定しますが、担当者が決まらず、やむを得ずくじ引きで決めているマンションも少なくはありません。
マンションのあらゆる問題を一手に引き受ける管理組合は、理事長ともなれば、大きなプレッシャーを伴うでしょう。
しかし、マンション管理組合の理事長は、決して損な役回りだけではありません。
理事長を務めることにはメリットがある
理事長になると、普段生活しているだけではわからない、マンションの実態が把握できるというメリットがあります。
駐車場やエントランスなど共用部の利用状況や、住民同士の繋がり、建物の老朽箇所、修繕のためにどのくらいの費用が必要で、修繕積立金は回収できているか、といったことなどが、理事長になることで見えてくるでしょう。
あるいは、マンション住民から届く悩みやトラブルの相談を解決していくうちに、マンションが抱える問題が客観的に見渡せるようになり、自分自身と家族の生活環境を改善する方法も提案できるようになります。
例えば、喫煙ルールの徹底や、深夜の騒音トラブル、修繕積立金の滞納といった問題を解決することによって、マンションの住環境をより高めていくことができるでしょう。
理事長経験は住民全員の役に立つ
管理組合の役員の任期は、おおむね1~2年ですが、この経験は理事長を退任したあとも、マンションの管理運営に大きく役立ちます。
まず、多くの人がマンション管理業務に消極的になってしまう理由は、「何をしたらいいかわからない」ことが原因です。
理事長経験者が、役員を退いたあとも率先して、過去の役員経験をもとに意見を述べたり、積極的に総会に参加したりすることで、メンバー全員が積極的に意見を出せる、風通しの良い管理組合になるでしょう。
理事長を経験した人の体験談
管理組合の理事長は、区分所有者の代表として、マンションに関わるすべての問題を話し合い、改善していく重要な機関です。
しかし、すべてのマンション管理組合が、積極的に意見を交わし、活発に活動するとは限りません。
管理活動に対して積極的な管理組合と、そうではない消極的な管理組合それぞの体験談を比較してみましょう。
積極的な管理組合の体験談
問題解決に積極的な管理組合では、一人あたりの業務負担量が少なくなる傾向にあるようです。
- 「役員全員が能動的に動くため提案が出やすい」
- 「メンバーごとに得意なジャンルを分担できる」
- 「マンションの運営方法について、経験者からアドバイスをもらえた」
このような理由から、理事長を含むメンバー全員の業務負担量が、必然的に少なくなり、理事長に業務が集中しにくくなり、機動力が高い管理組合となっているようです。
消極的な管理組合の体験談
理事長をはじめとするメンバー全員が消極的な管理組合では、業務分担がうまく機能しないため、理事長は問題解決に孤軍奮闘しなければなりません。
そのため、
- 「理事長に相談が集中し、深夜や早朝に住民から呼び出された」
- 「総会を開いても住民が参加しない」
- 「問題の改善策を提案しても、住民からの反応がない」
という状態になり、役員のモチベーションはどんどん下がり、管理会社に運営を任せきりの、形だけの管理組合になってしまいます。
全員が危機意識を持って動く管理組合に
理事長や管理組合のメンバーが、住環境改善や大規模修繕工事の計画に消極的では、より良いマンション管理が行えないことは言うまでもありません。
しかし、
- 「災害をきっかけにメンバーが団結した」
- 「管理会社から提案された大規模修繕工事の内容に、住民全員が疑問を持った」
- 「多くの人が現状の管理規約に不満を持っていた」
など、大きな問題をきっかけに団結した管理組合もあります。
このように、マンションのトラブル解決に向けて、メンバーがどれだけ危機意識を持てるかが、積極的に動く管理組合作りの鍵と言えるでしょう。