マンション防水工事の進め方
外壁の塗装やタイル、シーリング、コンクリート、屋上やバルコニー、ベランダ、外階段など、マンションにはあちこちに防水をつかさどる箇所が存在します。
タイル材やコンクリートそのものの耐用年数は約30年ですが、塗膜やシーリング、防水シートなど、建物の防水機能の耐久性は約10~15年と言われます。
さらに、屋上やベランダは基本的に屋外にあるため、紫外線や屋外の飛来物が原因で、防水性が低下してしまうこともあります。
あるいは、地震の揺れや建物の歪みでコンクリートやシーリングに亀裂が生じ、ひび割れから漏水する可能性もないとは言いきれません。
マンションの強度を保つためにも、管理組合は、大規模修繕工事での改修を待たずに、外壁補修や防水工事などのメンテナンスを定期的に実施しておく必要があります。
しかし、外壁の補修や防水工事は騒音や臭いを伴い、足場設置や養生中はベランダや外階段などの設備が使えなくなるため、多くの人が生活するマンションで、管理組合の判断だけで気軽に改修を行うことはできません。
もし、管理会社から防水工事の打診を受けた時は、見積もりの内容ですぐに決定せず、防水工事の技術を持つ業者に、劣化の内容と施工時期を診断してもらい、居住者からの理解を得たうえで改修に踏み切ると良いでしょう。
防水工事業者の選び方
マンションの防水工事は、以下のような業者に依頼することができます。
- 外壁塗装業者
- 防水工事専門業者
- 設計事務所
- リフォーム会社
- 管理会社指定の業者
塗装業者は、防水工事の技術を持っている所や足場設置の資格を持つ所も多く、見積もりの際に、シーリング工事やタイルの点検、下地補修の有無など、外壁の様々な劣化に関する診断もしてもらえます。
防水工事専門業者は、雨漏りや漏水が起きる原因にも詳しいことから、一時的な補修や診断だけでなく、今後漏水を発生させないためのメンテナンスについてアドバイスをもらえる可能性があります。
また、設計事務所やリフォーム会社を選ぶ時は、必ず大規模修繕工事を経験している会社を選ぶようにしましょう。
大規模修繕工事の設計監理経験を持つ業者であれば、マンションのような大きな建物でも、適切な劣化診断と状況判断により、管理組合と居住者に配慮した、柔軟な改修スケジュールを組んでもらえます。
ただし、自社に工事スタッフが在籍していないリフォーム会社を選ぶと、下請けに使う塗装業者や足場設置業者への「中間マージン」が、工事費用とは別に発生しますので、見積もりを確認する時は注意が必要です。
なお、管理会社に施工会社選びを任せると、その場限りのメンテナンスになり、見積もり金額の妥当性も管理組合で検証することができませんので、できるだけ管理組合で業者を選ぶことをおすすめします。
悪質!管理会社が提出する各工事会社の相見積もり資料は注意が必要!
最近では管理会社が複数社に見積もり依頼をして、A社,B社,C社,D社というような形で横並びで見積もり金額を資料として出してくることがあります。
しかし、実際に全ての会社に見積もり依頼をしているかは不明瞭であり、一番安い見積もり金額の会社は管理会社と繋がっていることがほとんどで、その会社に誘導するための資料となっています。
誠に残念ですが、管理会社はこのように不誠実なことを平気で行うので工事会社の選定は必ず、管理組合が直接工事会社に問い合わせをし、見積もりをお願いしてください。専門家による現地調査・見積もりの提出は、ほとんどの工事会社が無料で行ってくれます。
ご自身のマンションの地域に対応している評判の良い工事会社を無料で紹介することも可能ですので、お気軽に下記お問い合わせフォームよりご相談くださいませ。
マンションで行う防水工事と費用
マンションで行われる防水工事の工法は、主に3種類です。
防水工事は費用相場も異なりますが、施工方法や耐久性も異なるため、屋上やバルコニーなど、施工を行う箇所によって使い分ける必要があります。
そのため、大規模修繕工事の計画では、見積もりの金額だけでなく、各部位ごとに適した工法を検討しましょう。
アスファルト防水工事の費用
平方メートルあたり:約5~8千円
アスファルト防水とは、シート状になったアスファルトを、屋上の床面に固定する工法です。
耐久性の高い厚い防水層を作ることができますが、施工が難しく大掛かりな工事になるため、屋上で行う防水工事に適しています。
塩ビシート防水工事の費用
平方メートルあたり:約3~7千円
シート防水とは、塩ビシートを屋上やバルコニーの床面に固定する工法です。
施工のしやすさも然ることながら、塩ビシートを重ねて継ぎ目を発生させないように作ることによって、屋上・バルコニーどちらにも耐久性の高い防水層を作ることができます。
塗膜防水工事の費用
平方メートルあたり:約4~6千円
塗膜防水とは、塗装の防水機能で建物の耐久性を高める工法です。
主にウレタン塗料が使われますが、ウレタン塗料は、衝撃に対して伸縮する性質を持つ塗料です。
そのため、地震などの衝撃で建物が揺れても、ウレタン塗膜が伸縮して、モルタルやコンクリートのひび割れを防ぎます。
また、塗膜防水は、シートで作る防水層と違って、障害物や凹凸の多い入り組んだ床面でもハケを使ってまんべんなく塗料を塗ることができます。
他2種類の防水工事に比べると、耐用年数は少し劣ってしまいますが、下地補修の必要がなければ、確かな防水性を発揮できるでしょう。
ただし、下地補修をしっかり行わずに塗料を塗っても、塗料本来の防水性を発揮することはできませんので、下地補修までしっかり行ってくれる業者選びが命運を握ります。