大規模修繕工事で「改修」が必要と言われたら
約10~12年周期で行われる大規模修繕工事は、劣化した設備のメンテナンスだけでなく、使いづらさを感じる設備を見直すタイミングでもあります。
「改修工事」とは、使いづらさを感じたり、現代の生活様式にそぐわなかったりする設備に手を加え、新しい価値を与える工事のことです。
同じ大規模修繕工事でもマンションごとに違いがある
大規模修繕工事は、すべてのマンションで必ず実施されるものですが、マンションの劣化状況や建物規模、共有設備の数や種類によって、行われる工事の内容は異なります。
そのため、管理組合を務めるマンションの大規模修繕工事で、どのような作業が発生するか予測することは、工事費用の予測や業者との打ち合わせを円滑にし、管理会社任せの管理体制から脱却するためにも大切です。
管理組合の方必見!マンションの大規模修繕工事の進め方や流れは?
修繕と改修の意味の違い
大規模修繕工事では、劣化した設備を元の状態まで戻す「修繕」と、古くなった設備をリニューアルして新しい価値を付け加える「改修」が、建物の規模や劣化具合に応じて行われます。
施工会社からの見積もりを見る時や、施工管理者との打ち合わせで「これは修繕よりも改修が必要です」と言われても、意味の違いがわかっていないと、工事内容が適切かどうか見極めることができません。
マンションの現状に相応しい工事を、修繕積立金の範囲内で、適正価格で実施するためにも、管理組合で、修繕と改修の違いを把握しておきましょう。
修繕と改修の違いは?大規模修繕を検討しているマンション管理組合の方は必見です!
設備を元の状態に近づける「修繕」
大規模修繕工事の名前にも含まれている「修繕」ですが、これは、劣化したり壊れたりした設備を、元あった状態にまで戻すことを指します。
修繕工事は、元の状態に戻すのみでよく、グレードの高い設備に交換することは目的ではありません。
設備をリニューアルする「改修」
古くなったり壊れたりした設備を、より性能が良い状態にすることを「改修」と呼びます。
ただ単に、修繕で元の状態に戻すよりも、少し費用をかけてでも、大規模修繕工事の際に、性能の良い設備を導入した方が、マンション居住者の住み心地にも、建物の資産価値にもプラスになることがあります。
改修はリニューアルという意味も含まれていますので、設備を交換したあとに、元の設備と性能が変わっていなければ、改修とは呼ばれません。
大規模修繕で行われる改修工事の例
具体的に、大規模修繕工事で行われる改修工事の例を見てみましょう。
グレードの高い設備と交換する改修工事
- 外壁塗装を、前の塗料よりも性能の良い塗料で実施する
- エントランスの玄関ガラスを強化ガラスと交換
- 全戸室のサッシを断熱窓ガラスと交換
- シート防水の屋上に、アスファルト防水工事を実施
など
新しい価値を付け加える改修工事
- 全面打診調査を視野に入れ、低層階のタイル外壁をリニューアル
- エレベーターを新規導入
- 階段や廊下にバリアフリー手すりを追加
- 全戸室のインターホンをモニター画面付きに交換
- 使われていない会議室を明るいカフェスペースとしてリニューアル
など
改修工事の満足度は管理組合の手にかかっている
上記の改修工事は、いずれも実施することで、建物の資産価値を大いに高めるものばかりです。
しかし、これらの工事の必要性は、施工会社や管理会社など、マンションに住んでいない人にとってはわかりづらいものです。
そのため、施工会社や管理会社に言われるままに工事を進めてしまうと、改修すべき箇所を修繕で済ませてしまったり、不必要な改良を加えて修繕積立金が不足したりといった、無駄の多い大規模修繕工事になりかねません。
自分たちのマンションにとってどんな改修工事が必要か、管理組合が居住者の代表となって、管理会社に代わって、大規模修繕工事を進めて行く姿勢が大切と言えるでしょう。
修繕と改修を踏まえて長期修繕計画の作成を
修繕と改修の違いがわかっていれば、約30年にわたる大規模修繕工事の計画をまとめる「長期修繕計画」の作成も、より充実した内容となり、マンションの資産価値向上にも結びつきます。
「この設備は改修すると修繕積立金が不足するので、今回は修繕で済ませよう」
「この設備は前の大規模修繕工事で修繕したばかりなので、リニューアルは見送ろう」
といった具合に、毎回の大規模修繕工事で、修繕と改修をバランスよく行うことができれば、修繕積立金の範囲内で、マンション居住者にとって満足度の高い長期修繕計画が行えるでしょう。