長期修繕計画の作成費用は?作成ソフトやエクセルでの作成方法も解説

長期修繕計画の作成費用

長期修繕計画とは、大規模修繕工事を含む、約25~30年分のマンションの維持管理方法を予測するための計画です。

マンションの長期修繕計画書とは?

大規模修繕工事を円滑に進めるためにも、管理組合には、長期修繕計画表の作成義務があります。

長期修繕計画表の作成方法は、3通りあります。

1つ目は、マンションの管理会社に無料、または有料で依頼する方法です。

もう1つが、マンション管理士事務所などのコンサルタントに作成を依頼するものです。

最後の1つが、作成ツールや作成ソフト、エクセルなどを使って、管理組合で作成・管理するという方法です。

管理会社に委託した場合の費用

簡易な長期修繕計画であれば、無料、または約10~20万円の作成費用で管理会社に依頼することができます。

しかし、約30年分の収支計画をまとめる長期修繕計画表は、少額の費用では充実した内容が作成できるとは言えず、作成費用の見積もり金額が安くても、安心できません。

また、管理会社によっては、約35~50万円の見積もり金額で、入念な調査・診断を提案してくれることもありますが、管理会社の大規模修繕工事の理解度によって、費用対効果に違いが生じます。

コンサルタントに依頼した場合の費用

管理組合に作成義務があるとは言え、建築の専門家がいなければ、適切な長期修繕計画を作成することは困難です。

管理組合では、マンション管理士などのコンサルタントと、月額約3~5万円で顧問契約を結ぶことができます。

顧問契約を結んだ場合は、長期修繕計画表の作成費用も月額料金に含まれるため、単独で作成を発注した時よりも、リーズナブルかつ、管理組合との話し合いの中で総合的に作ることが可能です。

なお、マンション管理士などのコンサルタントに長期修繕計画表の作成を単独で依頼した場合は、約10万円の基本料金に加え、建物診断費用などに約60~100万円の見積もりを提示されることもあります。

長期修繕計画表の作成方法

長期修繕計画表は、エクセルで雛形を一から作ったり、作成ツールやフリーソフトを購入したりすることで、管理会社やコンサルタントなどの外部に委託せず、管理組合で作ることもできます。

ただしその場合は、国土交通省の標準様式に即して作成しなければ、大規模修繕工事までの収支や工事計画を適格に予測することができません。

そのため、エクセルで作成する時はもちろん、作成ソフトや作成ツールを選ぶ時も、国土交通省の標準様式に近い内容になっていることを、必ず確認しておきましょう。

マンションの長期修繕計画書のガイドラインや標準様式を確認しよう!

国土交通省の標準様式に含まれる項目

国土交通省の標準様式で定められている、長期修繕計画表に含むべき項目は、主に4項目です。

  • 計画年数:長期修繕計画の期間。約25~30年の範囲内で設定する。
  • 推定工事項目:修繕が必要な箇所の、工事単価、修繕周期、施工面積。
  • 収支計画:大規模修繕工事に関わる支出と、修繕積立金の累計額のバランス。
  • 修繕積立金の金額:計画に対して必要な修繕積立金を設定する。

大規模修繕工事の工事項目

大規模修繕工事で工事が行われる箇所は、主に、外壁工事・防水工事・鉄部塗装・設備リフォーム・共用部リフォームの5箇所です。

外壁工事とは、外壁塗装や外壁タイルの補修・張替え、シーリング工事などです。マンションでは、約2~3カ月かけて外壁の工事が行われます。

  • 修繕周期:約10~15年
  • 工事単価:平方メートルあたり約3~6千円

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防水工事とは、屋上やバルコニー床の防水性を高める工事です。マンションの規模にもよりますが、約1~2カ月の工事期間を要します。

  • 修繕周期:約10~15年
  • 工事単価:約8千~2万円/平方メートルあたり

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鉄部塗装では、手すりやフェンスなどの鉄部の防錆、サビ落としなどが行われますが、修繕周期が短いため、大規模修繕工事以外で約1カ月かけて実施しなければならないこともあるため注意が必要です。

  • 修繕周期:約5年
  • 工事単価:約2~5千円/平方メートルあたり

設備リフォームとは、給排水管、電気配線、ガス管など、マンション設備の点検・交換リフォームを指します。設備の大きさや設置数によっては、約1カ月の工事となることもあります。

  • 修繕周期:約15~30年
  • 工事単価:約80~200万円/一箇所あたり

マンションのエントランスや共用廊下など、共用部のリフォームは約1~2カ月の工事となりますが、共用設備が多いマンションほど工事期間は長くなります。

  • 修繕周期:約20~30年
  • 工事単価:約4千~1万円/平方メートルあたり

長期修繕計画の作成ツール

長期修繕計画の主な作成ツールは、以下の2つがあります。

化研マテリアル「長期修繕計画作成ソフトKLC」

  • 価格:315,000円

国土交通省の標準様式に準拠しており、計画年数や現在の修繕積立金を入力することで、ほぼ自動的に長期修繕計画表の作成が可能です。

注意点として、1台のパソコンのみにしかインストールできず、ネットワーク機能にも対応していないため、複数人で同時にデータを共有することができません。

その代わり、データをエクセルとしてすることで、エクセルがインストールされているパソコンで作成・変更を行えるようになります。

エーシーピーパートナーズ「土地名人」

  • 価格:80,000円

こちらは不動産管理業に必要なツールがワンパッケージになったソフトで、「長期修繕計画proツール」を使って、長期修繕計画表を作成することができます。

長期修繕計画proツール単独の購入はできず、パッケージ販売のみとなっていますが、国土交通省ガイドラインに沿って作られた入力画面がわかりやすく、さらに、修繕積立金が不足した時に使える提案書の雛形も用意されています。

エクセルで作成する時の注意点

ツールを使いこなすのが難しい、ツールの購入費用が捻出できない場合は、エクセルを使って長期修繕計画表を作成し、収支計画の予測だけでも管理組合で行うと良いでしょう。

ただし、行の追加や計画の変更を行うたびに、数式のずれや数値の乱れが発生するリスクもある点に注意しなければなりません。

また、国土交通省では、ホームぺージにて長期修繕計画の標準様式を無料で配布しています。

長期修繕計画標準様式(PDF)

このPDFデータをダウンロードし、フリーソフトなどを使ってエクセルデータに変換することで、様式の中に直接、数値や工事項目を入力できるようになります。

なお、この作成方法ではエクセルに数式が設定されていませんので、工事費用や積立金の計算などは、セルに数式を入力するか、電卓を使って計算することになりますのでご注意ください。

修繕積立金の予測だけを行いたい時は

修繕積立金と大規模修繕工事の収支を予測したい時は、こちらのサイトで配布されている、エクセルのフリーソフトの利用をおすすめします。

マンションの築年数や現在の積立額といった基本情報を入力するのみで、約30年間の収支バランスをグラフで可視化することができます。