マンションの修繕積立金が値上がりする理由とは
マンションの、大規模修繕工事を行うための資金である修繕積立金は、様々な理由で値上げが必要になる時があります。
管理組合は、修繕積立金の値上がりが起きるケースを知っておき、大規模修繕工事の費用が不足して資金繰りに慌てないよう準備しておかなければなりません。
マンションの修繕積立金を値上げせざるを得ない理由には、主に以下の3つがあります。
大規模修繕工事の費用予測を誤ったケース
予想外の工事が必要になることも多い大規模修繕工事では、予想通りの工事費用に収まらないこともあります。
マンションの大規模修繕工事は、長期修繕計画に基づいて、費用や修繕積立金を予測しながら行われます。
しかし、工事箇所の見落としや工事費の値上がりなどが原因で、計画作成時の工事費用と実際の工事費用が大きく変わり、修繕積立金の値上げや一時金の徴収で、不足分を補うマンションは後を絶ちません。
できるだけこういった事態に陥らないように、長期修繕計画は、管理組合で定期的に見直しておくことが大切です。
元の修繕積立金が低過ぎたケース
新築したばかりのマンションでは、マンション購入者に安心感を抱かせるために、わざと、修繕積立金が少なく設定されている傾向にあります。
修繕積立金の相場は、築年数が10年近いマンションでは約15,000~20,000円となっていますが、新築マンションの場合、約10,000円を下回って設定されているケースも少なくはありません。
しかし、大規模修繕工事の費用を賄えないほど低い修繕積立金では、いざ工事を行おうとしても修繕積立金が足りず、値上げを余儀なくされてしまいます。
「段階増額積立方式」を採用しているケース
マンションの修繕積立金は、2種類の徴収方法があります。
ひとつが「均等積立方式」という方法で、次の大規模修繕工事まで、一定の金額を徴収し続けるものです。
もうひとつが、数年単位で段階的に修繕積立金が上がる「段階増額積立方式」という方法です。
先ほど新築マンションの例をご紹介しましたが、新築マンションの多くは、後者の段階増額積立方式を採用して、後から値上げすることによって、低すぎる修繕積立金の不足分を回収しようとしています。
しかし、マンション購入者が、徐々に値上げされる修繕積立金に対応できなくなり、多くの滞納者を生み出してしまい、大規模修繕工事が満足に行えなくなるという問題も起きています。
そのため、国土交通省は、大規模修繕工事に関するガイドラインの中で、前者の均等積立方式の採用を勧めています。
マンションの長期修繕計画書のガイドラインや標準様式を確認しよう!
修繕積立金の値上がり相場
修繕積立金の値上げは多くのマンションで行われており、値上げが必要になったからと言って、必ずしも維持管理が行き届いていないマンションということにはなりません。
しかし、あまりにも高額な値上げは現実的ではないため、値上げに踏み切る前に、まずは修繕積立金の値上げ相場を知っておきましょう。
値上がり額は元の修繕積立金で決まる
値上げ額は、元の修繕積立金が1万円を下回る場合は、倍以上の値上がり額になることも珍しくはありません。
しかし、元の修繕積立金が、大規模修繕工事の予測費用に対し、適正価格で設定されていた場合は、約2,000~4,000円程度上がるのみで済むこともあります。
修繕積立金は値上がりすることが多い
修繕積立金の値上げは、総会決議で可決します。
しかし、経費の無駄遣いや、管理会社への業務委託費が高すぎるなどの問題を残したまま、修繕積立金の値上げを要求しても、住民は納得できませんので、総会の議決を得ることは難しいでしょう。
修繕積立金の値上げを防ぐためにも、万が一値上げが必要になったときに、総会で住民の同意を得るためにも、管理組合は、普段の管理業務の中で、経費削減や無駄の見直しに努めておかなければなりません。
修繕積立金の値上げを防ぐために
修繕積立が上がるのは、大規模修繕工事の費用に対し、修繕積立金が不足したときです。
つまり、確保すべき大規模修繕工事の費用に対して、修繕積立金が不足しないように、手元にある修繕積立金を無くさない工夫が必要と言えるでしょう。
管理組合で適切な長期修繕計画を作成する
大規模修繕工事の費用を予測するための、最も重要なツールが、長期修繕計画です。
長期修繕計画では、工事が行われる箇所ごとの耐用年数や、前回のメンテナンスとその費用などを、実際の工事履歴から導き出して、次回の大規模修繕工事の費用を計算します。
また、長期修繕計画には、現在の徴収状況から修繕積立金の積立額を予測するツールという側面もあります。
管理会社に言われるままに大規模修繕工事を実施せず、管理組合の手で長期修繕計画を管理することで、大規模修繕工事の費用と積立額を、より現実的な数値に近づけられるでしょう。
修繕積立金の無駄を削減する
大規模修繕工事だけでなく、普段の管理業務の無駄を削減することで、値上げを実行せずに修繕積立金の積立額を増やすことも不可能ではありません。
例えば、先ほどの新築マンションの例のように、マンション購入者の興味を引くために、住民から徴収する管理費を安く設定しているマンションでは、不足した管理費が、駐車場の利用料で補填されていることがあります。
しかし、駐車場の利用料を、全額「管理費」に回してしまうと、駐車場の修繕費用を、修繕積立金から別途取り崩さなければならず、積立ての効率が落ちてしまいます。
あるいは、管理会社への業務委託費が高すぎるために、駐車場の利用料を管理費に回さなければならず、修繕積立金に回せないというケースもあります。
もし、これらの会計項目が管理会社任せになっているようであれば、管理組合で見直しの機会を設けた方が良いでしょう。