マンションの共用部分は大規模修繕工事の対象になる
マンションの設備のうち、居住者全員が使う廊下や玄関、外壁や屋上などの共用部分は、約10年に一度実施される大規模修繕工事の際に、劣化状況の診断と修理が行われます。
共用部分の維持管理は、区分所有法によって、マンションの住民全員で行わなければならないと定められています。
管理組合は、マンション住民の代表となって、適切な工事内容と費用のもとで、大規模修繕工事を計画しなければなりません。
大規模修繕工事を行うべきマンションの共用部分とは
国土交通省が定めた『長期修繕計画作成ガイドライン』には、大規模修繕工事の際に点検や修理が必要な設備の例が記載されています。
ガイドラインに記載されている共用部分の概要
- 外壁:外壁のタイル、コンクリート、モルタル、目地のシーリング、外壁の塗装など
- 屋上:防水シート、手すりなど
- 廊下:壁、床、手すり、階段、照明など
- エントランス:エントランスドア、集合ポスト、床、照明など
- 設備系統:給水管、排水管、ガス設備、電気設備、給水ポンプなど
- その他共用設備:エレベーター、インターホンなど
- 居住者の部屋付近の設備:窓サッシ、バルコニー、玄関ドアなど
マンションの共用部分が劣化すると発生する症状
共用部分が劣化すると、単純に見た目が悪くなるだけでなく、漏水や漏電、事故や災害時の対応の遅れなどに繋がり、マンション住民の生活や安全を脅かしてしまいます。
設備の故障による生活への支障やトラブル
例えば、給水管や排水管が寿命を迎えて漏水しかけているにも関わらず、大規模修繕工事の際に点検や修理を怠ると、ある日突然水道が使えなくなり、住民全員が、お風呂や家事などの普段の生活を行えなくなってしまいます。
あるいは、給水管や排水管の漏水を放置した結果、階下の住居や構造材内部で雨漏りが発生したり、内装材にカビが生じたりすることもあるため、早めに処置しなくてはなりません。
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電気設備に関しても、新築から一度も点検されていない電気配線が、知らぬ間に漏電して、火災の原因になってしまう恐れがあります。
その他、剥がれかけの外壁タイルを放置した結果、タイルが地上に落下して、通行人や住民にぶつかれば、重大な事故に繋がりかねません。
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災害時の避難の遅れや二次災害の誘発
とっくに耐用年数を迎えた、火災報知器や緊急用の消火ホースを設置していても、火災発生時に効果を発揮することができません。
また、停電時のための蓄電池や予備電源が設置されていなかったり、非常用の防災キットが準備されていないマンションでは、住民は救助が来るまで、マンション内で孤立してしまう恐れがあります。
建物の老朽化
コンクリートがクラック(ひび割れ)だらけになったり、外壁塗装が色あせたりしてくると、マンションの外観は一気に古ぼけた印象になってしまいます。
また、これらの劣化はマンションの外観を損ねるだけでなく、建物自体の劣化を早める原因にもなります。
建物は基本的に、何も手を加えないまま放置すると、耐用年数よりも先に寿命を迎えてしまいます。
大規模修繕工事を、約10〜12年に一度実施することによって、設備の耐用年数が訪れる前に補修を行うことができ、結果的に、マンション自体の耐久性と寿命も高めることができます。
マンション共用部分の劣化診断とは
マンションの共用部分は非常に範囲が広いため、管理組合が、一つずつ劣化を調べて、工事が必要かどうかを判断するのは、労力的にも知識的にも現実的ではありません。
設備の劣化診断は、工事会社や建築士などに依頼することで、より正確で精度の高いデータを集めることができます。
劣化診断の方法
コンクリートのクラックや塗装のチョーキングなど、目に見える範囲の劣化診断は、目視や打診によって行われます。
コンクリート内部の中性化や構造材の耐震診断、給水管の劣化などは、目視や打診では調べることができませんので、専用の器具を使った破壊調査や赤外線調査が必要です。
また、劣化診断では、バルコニーや玄関の立ち入り検査が行われることもあるため、劣化診断を実施する前に、住民に知らせておかなければなりません。
劣化診断は管理組合が執り行う
劣化診断は、マンションの管理会社に依頼することもできますが、管理会社にとって都合の良い工事内容を組まれてしまう恐れがあります。
利益優先の管理会社に劣化診断を依頼してしまうと、管理会社と付き合いのある工事業者が劣化診断を行い、不必要で高額な修理工事が追加され、工事費用が跳ね上がってしまうことも考えられるでしょう。
このような事態を避けるためにも、管理組合で劣化診断を行う業者を探したり、建築事務所など、施工管理に長けた専門家を雇って、劣化診断のアドバイスを受けたりすることをおすすめします。