マンションの管理方式「自主管理」とは
「自主管理」とは、マンションの管理業務を、管理会社などの外部機関に委託せず、そのマンションの管理組合だけで行う管理方法のことです。
管理会社に業務委託をしても、総会や理事会などの一部の業務は管理組合が行わなければならないため、管理組合の業務が全てなくなるわけではありません。
しかし、会計や長期修繕計画の作成、清掃といった、発生頻度が多い業務の一部を外部機関に委託できるため、すべてを管理組合だけで行う自主管理に比べると、業務量ははるかに少なくなります。
マンションを自主管理にしている管理組合の割合
現在、自主管理方式を取っているマンションの割合は、非常に少なくなっています。
『平成25年度マンション総合調査(国土交通省)』によれば、調査に答えたマンションのうち、自主管理にしている所の割合は、全体の約6.3%しかありませんでした。
今後マンションの自主管理を検討しているようであれば、上記のデータも踏まえて、自主管理のメリット面だけでなく、デメリット面もしっかり把握しておきましょう。
マンションを自主管理するメリットとは
マンション管理のすべてを管理組合で行うメリットは、外部の意見を待たずに、管理組合が自主的に管理業務を行える点にあると言っても過言ではないでしょう。
その他にも、悪質な管理会社と契約してしまうリスクや、委託費に会計が圧迫される不安もなくなるなどのメリットがあります。
居住者目線で問題を解決できる
外部機関を介さずに、管理組合がマンション住民の代表となって、修繕計画や会計業務を行うことにより、住民目線で物事を進められるようになります。
また、居住者の中で話し合った結果を、管理業務にダイレクトに反映させることができますので、外部の意見に惑わされたり、管理会社の意見を待ったりする手間もなくなります。
管理会社とのトラブルに巻き込まれなくなる
不誠実な担当者に当たってしまったり、管理費を不正に使用されてしまったりといった、管理会社とのトラブルに巻き込まれなくなる点も、自主管理の大きなメリットです。
その他、管理会社に言われるままに、よくわからない業者に修繕工事を任せてしまい、やらなくていい工事まで実施して、修繕積立金が不足したといった事態も避けることができるでしょう。
業務委託費用が発生しない
管理会社に支払う業務委託費用がなくなる分、入居者の負担も減り、管理費の滞納による居住者とのトラブルも防げるようになります。
マンションを自主管理するデメリットとは
多くの管理組合が、自主管理ではなく業務委託を選択している以上、自主管理にはそれなりのデメリットがあると言わざるを得ません。
業者や居住者とトラブルになるだけでなく、最悪の場合、建物の老朽化にも繋がりかねない、自主管理のデメリットについてしっかり理解しておきましょう。
管理組合の業務量が増える
自主管理になると、会計、清掃計画、大規模修繕計画といった、管理会社が行ってくれるはずの業務もすべて管理組合が行わなくてはなりませんので、通常業務の量はさらに膨大になります。
また、管理組合のメンバーに、マンション管理や修繕工事に詳しい人物がいなければ、専門知識の不足によって無駄な手間と時間が発生し、余計に業務量が増えるという悪循環を生んでしまうでしょう。
管理能力が限界を迎えるときが来る
自主管理を辞め、業務委託方式に移行した管理組合では、居住者の高齢化により管理が困難になったことが、移行の最大の理由となっています。
また、ほとんどのマンションでは、理事会のメンバーは1~2年で入れ替わりますので、その都度引き継ぎが上手くいかなければ、管理力は年々低下し、建物の管理が行き届かなくなってしまいます。
あるいは、管理に携わるメンバーが固定され、理事会の権限を私物化してしまい、入居者全員に公平な管理が行われなくなるというリスクも考えなくてはなりません。
マンションの資産価値が低下する
適切な時期に修繕や清掃を指示してくれる管理会社がいないため、建物のメンテナンスがおろそかになり、マンションの美観や耐久性が損なわれる恐れがあります。
適切な長期修繕計画と修繕積立金の予測が行えなければ、修繕積立金を延滞する居住者が続出し、大規模修工事の費用が用意できず、建物の劣化がどんどん進行し、資産価値の低下に繋がる恐れもあるでしょう。
どうしてもマンションを自主管理にしたい時
もし、自主管理のデメリットも検討したうえで、業務委託方式から自主管理に移行する場合は、以下の手順を踏むことになります。
自主管理に移行するためのプロセス
自分たちのマンションを、自主管理方式に移行するためには、現在契約している管理会社との契約解除を、総会で決議することになります。
このとき、
- なぜ管理会社と契約解除しなくてはならないのか
- 現在の業務委託方式に、どのようなデメリットがあるのか
- 自主管理にすることで、入居者はどういったメリットを受けられるのか
- 自主管理できるだけの能力が、管理組合にあるのか、また、それが継続できるか
などについてしっかり話し合わなければなりません。
また、入居者にも、管理会社の契約解除と自主管理移行について説明会を開き、アンケートを取るなどして、入居者全員に公平な決議となるようにしましょう。
自主管理に移行する前によく話し合いを
現在わずかに残っている自主管理方式のマンションも、高齢化や生活の変化により、徐々に管理委託方式に移行しつつあるのが現状です。
必要経費である管理委託費を削減したり、管理組合の業務を増やしたりしてまで、自主管理に移行する意味があるのか、理事会で、入居者全員の意見も聞きながら、よく話し合って決めましょう。