管理組合が知るべき個人情報保護法、ガイドラインのポイントを解説!

管理組合が知るべき個人情報保護法、ガイドラインのポイントを解説!

改正個人情報保護法に関して知っておくべきポイントとは?

改正個人情報保護法の大きなポイントとして挙げられるのは、適用対象となる枠が撤廃されたことにあります。従来は5000人以上という個人情報の取り扱い件数によって線を引き、保護法の対象としていました。

この枠が撤廃されたことで、ほぼすべての事業者のみならずNPOなどの団体、自治会や同窓会など、個人情報を取り扱う組織すべてが改正個人情報保護法の対象となったのです。

また個人が識別できないように情報を加工選択した上で、ビッグデータとして活用する道も広がりました。個人情報の管理には十分注意を払うことが必要ですが、情報の集積を有効に活用することも可能になったわけです。

個人の側にしてみれば、取り扱い件数によって自分の情報の保護や取り扱いに差が出るのはおかしな話です。改正によってその枠が撤廃されたことは妥当だと言えるでしょう。

またビッグデータとして身近な例を挙げると、ネットショップなどを利用した際にこれまでの購買履歴やおすすめといったメニューが提示されることがあります。

ログインや購買パターンなどの情報の集積は、これからさまざまな用途で活用されていく可能性があります。今は世に出ていない新しいサービスが生まれる可能性もあるでしょう。

適切に管理保護する必要がある個人情報ですが、有効に活用することで私たちの生活に活かすこともできる、それが改正個人情報保護法の目的なのかもしれません。

個人情報の取得や利用、保管はどうすればいい?注意すべき点とは?

では個人情報を適切に管理していくためには、どうすれば良いのでしょうか。個人情報を商業利用するわけではないマンション管理組合として、どこに注意すべきなのでしょうか。

個人情報を収集する時、情報を保管する時、その情報を共有または開示する時、そして情報を廃棄する時と見ていきましょう。

個人情報を収集する時

マンションを管理運営していく上で、各戸の所有者を把握することは必要不可欠です。管理のための総会やさまざまな連絡事項、また災害などの緊急事態に対応するためにも、個人情報はなくてはなりません。

これは所有者に限ったことではなく、部屋を賃貸している使用者でも同様です。氏名や勤務先などの連絡先、同居人などの情報は漏れなく把握しておく必要があります。

こうした情報を取得する場合、マンションの管理運営のために必要であることを告げた上で同意を得ておくこと、できれば明文化された書面によることが重要です。その際、情報の使用用途や開示先等も記載しておきます。

個人情報保護法の適用下であっても、災害時などの緊急事態に際しては警察などの要請に対して速やかに情報を提供することが求められます。こうしたことも明文化しておく必要があります。

個人情報を収集する目的と使用用途、例外がある場合の規定などを明記し、説明した上で同意のもと署名してもらう、これが情報を収集する場合に重要なポイントとなってきます。

個人情報を保管する時

最も注意すべきなのが個人情報の保管です。ちょっとした不注意や気の緩みが情報の流出や紛失につながりますから、細心の注意を払う必要があります。それは紙であってもデータであっても同じです。

情報は管理組合として保管管理するために適切な鍵のかかる事務室、鍵のかかるデスクなどに保管しなければなりません。データの場合にはセキュリティ対策を施した上で、パスワードなどで管理します。

管理組合の役員を持ち回りで行う場合、従来であれば情報を個人所有のパソコンなどで保管、作成していたこともあるでしょう。このような場合、十分な注意が必要になります。

また個人情報に関わるデータや資料を作成する場合、資料を放置したまま部屋を空けるなど極力避けるべき事柄を決めて、管理組合としてのルールを定めることも重要です。

紙でもデータでも、個人情報の安全な保管管理は欠かせません。セキュリティ対策をきちんと施した場所で保管を行うことが重要です。管理組合としてのルールを作成し、保管管理体制を整備することも視野に入れておきます。

個人情報を開示する時

個人情報を取得する場合同様、開示する場合にも本人の同意が必要です。実務的にはあらかじめ管理運営に必要な情報の共有先を明記した書類に署名してもらうことで、問題なく管理していくことが可能です。

しかし本来の目的以外で個人情報を使用する場合には、あらためて本人の同意が必要であることに留意しておく必要があります。管理運営のために取得した情報を、それ以外の目的のために使用することはできないのです。

唯一の例外は、災害などの緊急事態に関わるケースです。人命救助や安否確認などで必要な場合には、それが最優先であることを共通認識として把握しておきます。

通常の管理運営に必要な情報の共有、開示についてはあらためて本人の同意を得る必要はありません。しかし本来の目的以外のための情報の開示については、本人の同意を得る必要があります。

災害などの緊急事態の対応については、例外として情報の開示が認められています。

また保管管理されている個人情報について、本人の要求がある場合には速やかに開示しなければなりません。その際、情報の訂正や変更が指摘された場合、これも速やかに対応する必要があります。

個人情報を破棄する場合

情報が古くなって使用しなくなった場合の処理についても、細かな注意が必要です。紙の場合にはシュレッダー等を使用して、復元できないように処分します。データの場合も同様に完全に削除し、再利用できないように処理しておきます。

個人情報についてルールを定める

マンション管理組合の役員には任期があります。その任期が更新されるたびに個人情報の取り扱い方法が変わったり、役員個人の裁量に委ねられるのは好ましいことではありません。

管理組合として明確なルールを作成し、改選による影響がでないように対応しておく必要があります。そうすることが役員個人の負担と責任を共に軽減し、個人情報の安全で適切な管理につながるはずだからです。

滞納者の氏名公表などよくある疑問を集めました!

改正個人情報保護法が施行されたことで、個人情報を取り扱うほぼすべての組織がその対象となりました。個人情報の取り扱いや運用には曖昧な点も多く、判断に戸惑う場合もあるようです。

個人情報とは、どの範囲を指すのか

個人情報を取り扱うのに、一番最初にぶつかる疑問がこれでしょう。氏名や住所などの個人情報の範囲がどこまでなのか、明確でなければ適切に管理することはできません。ここは必要以上に難しく捉えることなく、個人を特定できる情報と受け止めましょう。

管理費の滞納者氏名を公表すべきか

マンション管理組合が直面する問題としてよく挙げられるのが、マンション管理費等の滞納対策です。管理費はマンションの補修やメンテナンス等に充てられる資金で、滞納が多いと必要な修理を行うことができません。

補修が行き届かないとマンションの資産価値に影響しますし、きちんと支払っている所有者との不公平感は増すばかりです。ここが戸建て住宅と異なる共同住宅の管理の難しいところです。

こうした滞納者に対する対応として、滞納者氏名等を他の所有者に公開すべきかどうか、改正個人情報保護法との兼ね合いはどうかがポイントとなっているのですが、この問題をめぐってはたびたび訴訟にもなっています。

管理組合としてやるべきことは、まず個別に支払いを促すことでしょう。事情があるのなら期限を明示して支払いを促し、それでも改善されない場合には内容証明を送付するなどの対策が必要になります。

滞納に対する対応策を管理規約に定めてあり、公開するとしている場合でも、順序を踏まえて請求していくことが必要です。その間の交渉の過程や結果に対して、情報を蓄積していくことも重要です。

最後の手段として裁判になった場合、それらの蓄積が役に立つ可能性もあります。悪質な滞納者である場合、支払い命令が出される可能性もあるでしょう。しかしいきなりの氏名公表はおすすめできません。

総会などの機会を利用して、滞納対策を話し合っておくことも一つの手段です。滞納に対する認識を共有しておくことは、安易な滞納に対する牽制ともなるでしょう。個人情報は取り扱いに注意すべき情報です。

滞納情報は、さらに慎重に扱うべき情報です。一時の感情に左右されることなく、一つ一つ対策を積み重ねていくことがとても重要なのです。

管理組合のための個人情報保護ガイドラインの重要な点をまとめました!

改正個人情報保護法が施行されたことで、マンション管理組合の責任も重いものとなりました。個人情報の管理運営が厳格化された背景にネットの普及があることは間違いのないところです。

管理組合としての情報の管理が大変なものだとしても、立場を変えれば組合員として情報を管理される側でもあります。

今後個人情報の保護管理体制が弱まる可能性はほぼあり得ないのですから、先回りしてでも対策を作り上げることが重要です。その際に参考にできるのが、マンションNPOによる管理組合のための個人情報保護ガイドラインです。

個人情報保護法の基礎的な概要や説明から他国における事例、考察など詳細に渡って記述されており、読み物としても読みごたえのあるものとなっています。

続いて管理組合との具体的な関わり、関係や影響が記載されています。改正個人情報保護法が施行された背景や他施策との関係も興味深いところです。

大きな改正ポイントは数えるほどでも、実務上必要なこと、個別に把握すべき点が多いのも改正個人情報保護法の重要な点です。

個人番号等の個別具体的な案件についても、管理組合のための個人情報保護ガイドラインは助けとなってくれるでしょう。ぜひ参考にしてみて下さい。